カラオケの鉄人さんの今後について

首都圏に61店舗を展開する老舗の中堅カラオケチェーン、カラオケの鉄人さん。
(店舗数は2017年8月エンジョイシング調べ)

地方の方々にはあまり馴染みのないカラオケ店かと思いますが、
首都圏在住のカラオケファンからは 「カラ鉄」という愛称で親しまれるなど、
一定の存在感を保ち続けています。

唯野も時折利用していますので、特徴を少し紹介いたします。

その前にまず。


フードメニューのキャンペーンをしていましたので、二品ほどいただきました。


左:ガーリックシュリンプライス
右:チゲ鍋うどん

いずれも程よい辛さで味もしっかりしていて、
辛党の唯野にとっては食べ心地十分で、おいしくいただきました。

さて、カラ鉄さんと言えばこちら。


「鉄人システム」という、独自のカラオケ選曲統合システム。
平たく言えば、一部屋で複数のカラオケ機種を選曲できる仕組みです。

通常、カラオケ店には一部屋につき一種類のカラオケ機種が設置されています。
(DAM部屋、JOYSOUND部屋、といった具合ですね)。

そこをカラ鉄さんは、自社開発の「鉄人システム」を採用することにより、
ユーザーは一つの部屋でありながら任意の機種の楽曲を選んで歌うことができる、
そのサービスを大きなウリとしています。

しかしながら、実はこれが今、
逆にカラ鉄さんの大きなウィークポイントとなっているのです。

そもそも、現存するカラオケの機種は、DAMとJOYSOUNDのわずか2種。
(まねきねこさんの独自機種「すきっと」はここでは除いておきます)

これがたとえば、一昔前のようにカラオケ機種が5~10種類ぐらい存在し、
それぞれの機種がそれぞれの機種にしか配信されていない楽曲が
数多くあるということであれば、
鉄人システムは非常に優位性のある仕組みだったと思います。

しかしながら現存するカラオケ機種は2種。
しかも両機種ともに配信曲数は今や20万曲以上。

20万曲以上も配信されているので、
仮に片方の機種にしか配信されていない楽曲があるとすると、
それはあまりにもマイナーな楽曲と思われ、
その楽曲に対する需要は全体から考えても非常に微々たる割合かと思います。

つまり今や、一部屋で機種を複数選べることのメリットは薄いということになります。

さらに、現在の鉄人システムには、非常に大きなデメリットもあります。

昨今のカラオケは、単に歌うだけではなく、充実したコンテンツもまた魅力です。
一番わかりやすい例は、テレビでおなじみの「精密採点DX-G」などの採点機能。
他にも、DAM★とも、うたスキ動画など、
自分のカラオケ映像を撮影して公式Webを介して公開するコンテンツも人気です。

こうした、機種に依存したコンテンツは鉄人システムでは楽しむことができないのです。

つまり「精密採点DXをしよう!」と思うユーザーはカラ鉄さんを選ばないということ。
つまり「録音・録画をしよう!」と思うユーザーはカラ鉄さんを選ばないということ。

…というように、今や鉄人システムの仕組み自体がネックとなってしまい、
コンテンツを楽しみたいというコアなカラオケユーザーの足を
遠ざけてしまっていると言えるのです。

もちろん、「カラオケは歌さえ歌えればそれでいいや…」といった
ライトなユーザーをメインの客層に想定しているのであれば、
このままでも良いかもしれません。

ただ、鉄人システムを導入したきっかけはおそらく、
「機種にこだわりを持つカラオケユーザーにも安心して楽しんでもらいたい!」
といったユーザーに向けての訴求を意識されたのではないかと思います。

であれば、このシステムが今のユーザーの志向に合わなくなっているのであれば、
いっそのこと全廃するのも一案ではないでしょうか。

まさに今こそが、カラ鉄さんの正念場にも思えてなりません。

 

<追伸>

実はこの8月に、カラオケの鉄人さんの運営会社、
鉄人化計画さんの経営陣がごっそりと入れ替わりました。

社長をはじめ、全取締役が総入れ替えとなりました。
経緯は鉄人化計画さんのサイトでも情報公開されています。
http://www.tetsujin.ne.jp/topics/

また、週刊東洋経済プラスのWeb記事でも、わかりやすくまとめられています。
http://tkplus.jp/articles/-/16344

鉄人化計画さんの創業者・日野洋一さんは2013年11月に社長から会長職に就き、
後任として、エイベックスさんグループ出身の堀健一郎さんが社長に就任しました。
その後、日野さんは2014年11月に会長職からも取締役からも退きます。

そして、2017年6月。
鉄人化計画さんの筆頭株主であるファースト・パシフィック・キャピタル有限会社さんから、
鉄人化計画さんに向けて、臨時株主総会の招集請求がなされます。

その内容は以下の通りです。

(1) 株主総会の目的たる事項
①取締役堀健一郎の解任の件
②取締役4 名選任の件

(2) 招集の理由
独断的職務遂行の取締役の解任と当社のための当社生え抜きの社員による
経営への回帰のためとされております。

http://www.tetsujin.ne.jp/topics/news/pdf2017/20170612b.pdf

上記の通り、これは堀社長に対する解任要求です。

そして、解任要求を発した筆頭株主、
ファースト・パシフィック・キャピタル有限会社さんの社長を務めているのは、
鉄人化計画さんの創業者・日野洋一さんです。

4年前、創業者の日野さんからバトンを受け継いだ堀さんは、
4年後、創業者の日野さんの会社から解任要求をされたということになります。

この請求の後に堀社長は辞任し、2017年8月に岡﨑太輔さんが新社長に就任します。

そして岡崎さんですが、プロフィールによると、肩書のひとつに、
「ファースト・パシフィック・キャピタル有限会社
マネージングディレクター社長室長就任(現任)」
とあります。

先に挙げました通り、
ファースト・パシフィック・キャピタル有限会社の社長を務めているのは、
鉄人化計画さんの創業者・日野洋一さんです。

つまり、今回の経営陣の刷新は、
創業者・日野さん路線への回帰とも読み取ることができるのです。

いずれにせよ、これまでの4年間とは大きく路線を変えていくことが予想されます。
カラオケの鉄人さんが今後、創業者路線にてどのように軌道修正していくのか、
そして、鉄人システムは今後どうなっていくのか、
カラオケ評論家・唯野としても興味深くじっくり見守りたいと思います。

 

<追伸2>

ここで、鉄人システムの利点を一つ挙げてみます。

実はカラ鉄さんでは、複数の機種を管理できるメリットを活かし、
カラ鉄さんでしか歌えないオリジナルの楽曲も配信されているのです。


画面の真ん中あたりに機種選択ボタンがありますが、
一番右は「カラ鉄Ver.」となっています。
これが、カラオケの鉄人さんでしか歌えないオリジナルカラオケなのです。

そして、この「カラ鉄Ver.」では、
エイベックスさん出身の堀(元)社長のチャネルを活かしてか、
エイベックスさん管理のCD音源でカラオケを楽しめる曲も
一部配信されているのです。


たとえば、ただいま人気絶頂の林部智史さんの「あいたい」も
カラ鉄さんであればCD音源で歌うことができます(もちろん背景は本人PV)。

カラオケ用に作られた音源ではなく、アーティストと同じCD音源で歌えるというのは、
カラオケファンには非常に魅力的なサービスであり、
他カラオケチェーン店に対しても大きく差別化を図れるコンテンツとなり得るはずです。

…なのですが、2017年現在、あまりにも対象楽曲が少ないのが惜しいところ。。
このあたり、チャネルを上手く活かして、
たとえばエイベックスさん管理楽曲全てを
CD音源で歌えるようなサービスができていたならば、
非常に話題になったことかと思います。

唯野は4年前からそれを期待していたのですが…。

さて、今後はどうなっていくのでしょうか。
諸々、興味深く見守らせていただきます。

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