yahooのトップページにも表示されていたので、ご覧になった方も多いかと思います。
東洋経済オンラインさんの以下の記事。
「西部警察カラオケ」は”脱常識”から生まれた~熱烈ファンの社員が打ち破った業界の常識
http://toyokeizai.net/articles/-/69089
記事の本題は、タイトル通り、
LIVE DAM STADIUMの新サービス「西部警察スペシャルカラオケ」についての紹介です。
http://www.clubdam.com/app/dam/dam/feature/seibupolice.html
企画の成立までの流れ等を、第一興商さんのご担当者様への取材とともにまとめあげたもので
本題・本筋については良記事かと思います。
しかしながら、カラオケ評論家・唯野として、絶対に見過ごすことのできない一文が
本文中に記載されているのです。
カラオケは1995年をピークに利用者が激減。とくに若者離れが激しく、
いかに若者を取り込むかが業界の課題となっている。
そのため、アニメやゲームの世界をカラオケ部屋に再現した
コンセプトカラオケルームなどの試みが始まっている。
…この手の記事については、唯野は何度も本サイトで取り上げていますが、
「利用者が激減」という表現は完全に不適切ですし、「若者離れ」に至っては何の統計的証拠もありません。
カラオケ業界に関する統計資料として最もよく使われる資料に、
全国カラオケ事業者協会発行の「カラオケ白書」があります。
カラオケに関する記事を書かれるライターさんの多くが、上記資料を参照にしています。
さて、その「カラオケ白書」によると、カラオケ人口の推移は、
確かに1995年度は5850万人と、最も高い数字であり、
それに比べて、2013年は4710万人という数字ですので、減少しているという事実は間違いではありません。
しかしながら、資料をよく見ると、
2001年以降は約10年以上にわたって4600万人~4800万人の間を推移しています。
したがって、ここ10年以上はカラオケ利用者は「横ばい」。
利用者数という視点だけで言えば、カラオケ業界は10年以上も安定していると見るのが自然です。
もっとも、こういう反論を持つ方もいるかもしれません。
1995年度の数字こそがあるべき利用者数であって、
2000年以降は、カラオケ業界は長期間にわたって苦境が続いているのだ、と。
では、本命題を、高校数学で学習する「背理法」で検証してみましょう。
命題:「利用者数という視点だけで言えば、カラオケ業界は10年以上も安定している」
仮に、4600万人~4800万人という数字を激減と呼ぶにふさわしい「深刻な数字」と仮定しましょう。
であれば、カラオケ産業は10年以上も「安定して深刻な不振が続いている」ということになります。
深刻な不振でありながら、利用者数が安定しているというのは不自然です。
なぜなら、業界全体が不振であれば、各企業ともにこぞって業界から手を引くはずなので、
業界規模は右肩下がりに縮小するはずであり、応じて利用者も右肩下がりに減少するはずだからです。
しかしながら、利用者数は10年以上も減少することなく、安定した水準を保っています。
つまりこれは、4600万人~4800万人という数字を「深刻な数字」と仮定したことが誤りであり、
この数字は「深刻」なものではなく、業界においての安定水準と考えられるものなのです。
このように、少なくとも10年以上も安定した利用者数を保っているという事実だけでも、
カラオケ業界は「不振」とは決して言えません。
あくまで1995年から2000年までの減少が目立っているに過ぎないのです。
それを「カラオケは1995年をピークに利用者が激減」などと表現してしまっては、
まるで毎年のように右下がりに減少している斜陽産業のように読み取られかねません。
それに、5850万人が4600万人になることを「激減」と表現するのも不適切です。
「激減」とは、せめて「半減」よりもさらに落ち込んだ状況に至った場合に使うべき表現です。
東洋経済オンラインさんという、名だたる経済の専門サイトである以上、
統計資料を正確に読み解いたうえで記事を書いていただかないと困ります。
「カラオケって、もう人気がないのね…」というように、読者さんをミスリードし兼ねません。
もう一度申し上げますが、2001年以降、10年以上にわたって、カラオケ利用者は横ばいです。
当該資料「カラオケ白書」は、全国カラオケ事業者協会の以下のサイトで誰も確認することができます。
http://www.karaoke.or.jp/05hakusyo/p1.php
上記とはまた別の何かしらの統計資料を元に、論拠を持って
「カラオケは1995年をピークに利用者が激減。とくに若者離れが激しく、
いかに若者を取り込むかが業界の課題となっている。」
という一文を記載されたのであれば、ぜひともその資料名を教えていただきたいところです。
特に、「若者離れ」なんて統計資料は存在しないと思いますが。。
こちらは、ニコニコ超会議2015の「超歌ってみた」ステージの様子ですが、
「若者のカラオケ離れ」なんて、まるで嘘のように盛り上がっています。
過去にも唯野はこうした前提説明の不十分な記事に対して
反論記事を書かせていただいています。
★突っ込みどころ満載のカラオケ記事を添削。
https://enjoysing.com/2014_08_25_23_24_08
★「深刻なカラオケ離れ…」という書き出しのWeb上の記事は全て誤りです。
https://enjoysing.com/2015_02_24_03_24_33
今後とも「カラオケ人口激減」「若者のカラオケ離れ」という内容の記事を見つけましたら
当サイトにて取り上げて反論させていただきます。