コロナ禍において、大人数が密室に集まって会話することはリスク視されます。
そのため、個室に複数人が集って歌う「カラオケ」もまたリスク視される場合が多く、
無念ではありますが、昨今のカラオケ業界にはかなり厳しい風が吹いています。
そこで多くのカラオケボックスチェーンはカラオケによらないサービスを打ち出しています。
そのひとつが、テレワークサービスです。
カラオケボックスの「個室」という特性を生かして、
(さらに言えば、コロナ禍によって空いたであろう)カラオケルームを
リモートオフィスとして用いてもらうといった試みです。
実際、大手カラオケチェーンにおいても、以下の店舗にてテレワークサービスを行っています。
◆ビッグエコーさん(店舗数全国第2位)(展開地域:全国)
「新しい、働き方。ビッグエコーでテレワーク!」
https://big-echo.jp/officebox/
◆カラオケ館さん(店舗数全国第4位)(展開地域:全国)
「カラオケ館でテレワーク!」
http://karaokekan.jp/campaign/2020070801.html
◆ジャンボカラオケ広場さん(店舗数全国第5位)(展開地域:首都圏を除く全国)
「ジャンカラでテレワーク」
https://jankara.ne.jp/pr/telework/
◆コート・ダジュールさん(店舗数全国第6位)(展開地域:全国)
「テレワーク応援プラン」
https://www.cotedazur.jp/information/2020/02/011044.html
◆JOYSOUND直営店さん(店舗数全国第7位)(展開地域:全国)
「カラオケ個室でテレワーク。」
https://shop-joysound.com/telework/
◆カラオケルーム歌広場さん(店舗数全国第9位)(展開地域:首都圏)
「ウタヒロでテレワーク」
http://www.utahiro.com/topics/tabid/73/Default.aspx?itemid=235&dispmid=410
◆カラオケJOYJOYさん(店舗数全国第10位)(展開地域:東海地方を中心)
「会議だカラ」
http://www.joyjoy.co.jp/joychoice.html#kaigidakara
上記のように、店舗数において業界トップ10のカラオケチェーンのうち、
7事業者が自カラオケボックスでのテレワークを推奨しています。
もっとも、カラオケボックスの各ルームを個室オフィスとして活用する事例は、
コロナ禍以前にもございました。
実際、唯野自身もマスメディア様との打ち合わせの際には、
機密性の観点から以前よりカラオケボックスを利用しています。
(喫茶店などのオープンな場で放送前の番組企画のお話はできませんので…)
とは言え、これだけ急速に各事業者が「自店でテレワークを!」と発信するようになったのは、
やはりコロナ禍の影響によるものかと思います。
すなわち、リスク視されがちなカラオケの場における新しい利用方法の提示することで、
カラオケ店舗の継続利用を促すといった狙いです。
と同時に、(これは唯野の推測も入りますが)やはり客足は減少していると思われることから、
歌うことだけではない、新しい業務形態の導入も余儀なくされているのかなと思います。
もっとも個人的には、カラオケボックスはやはりカラオケを楽しむ場であり、
カラオケ以外の利用法の打ち出しはあくまで「応急処置」であるべきと考えます。
もしも、カラオケボックスがカラオケ事業をメインとしなくなった場合どうなるか。
仮にですが、テレワーク利用が大盛況となったとしましょう。
テレワーク事業がメインであれば、もはや部屋にカラオケ機材は不要となります。
すると当然、カラオケ機材は撤去されていき、
カラオケメーカーならびに代理店は大きな打撃を受けることとなります。
カラオケメーカーの売り上げが落ち込んでしまえば
新しい機種の開発も新しいコンテンツの制作も困難となります。
そうなればカラオケ業界におけるサービスは陳腐化してしまい、
新しいユーザーの獲得も困難となり、カラオケの利用人口も減ってしまうでしょう。
その時、カラオケボックス事業者はテレワーク事業者として生まれ変わることができるでしょうか?
おそらくはカラオケという柱があってこそのテレワーク事業のはずですので、
カラオケという柱が折れてしまえば、店舗事業そのものも衰退してしまうように思えます。
上記はかなり極論の推論かもしれません。
とは言え唯野的には、
「カラオケ店舗がカラオケ以外のサービスに力を入れ始めた時は黄信号」
という認識を持っています。
かつてはカラオケボックス全国店舗数ナンバーワンを誇りつつも、
今はカラオケ館さんに統合されたシダックスさんは、
2015年に「駐車場サービス」を始めました。
端的に言えば、月額3000円でお店の駐車場を貸します、といったものです。
唯野は正直、このサービスを見た瞬間に「シダックスさん厳しいのかな…」と思いました。
自店舗の駐車場を貸すということ自体、自店舗はガラガラですと宣言しているに等しいからです。
事実その後、2016年にシダックスさんの店舗が大量閉店されることがニュースで話題となり、
2018年はカラオケ館さんを運営するビーアンドブイさんに事業譲渡されることとなりました。
カラオケボックス事業者がカラオケ以外の事業を大きく打ち出すということは、
カラオケ事業が上手くいっていないことの裏返しとも取れるのです。
もちろん、今はコロナ禍ゆえにやむを得ないところはあると思います。
しかしながら、あくまでテレワーク事業は応急処置であり、
やはりはカラオケ事業をメインにお客様の回帰を狙うことこそが、
カラオケボックス業界の将来に繋がることと思っています。
そのためには、カラオケの「楽しさ」を訴え続けることが地道な王道かと思っています。
<追伸>
ちょうどコロナ禍の直前にビジネスジャーナルさんから取材を受けました。
「カラオケ店、ビジネス利用が普及…駅チカ&個室で便利、月1500円で毎日使い放題も」
https://biz-journal.jp/2020/02/post_139782.html
テーマはまさに「カラオケボックスでのテレワーク」でしたが、
その狙いとして唯野は「カラオケ業界における社会貢献」と回答しました。
「テレワーク」「働き方改革」自体はコロナ以前から言われていましたので、
「新しい働き方」の一助としてカラオケボックスの利用を提示することで、
カラオケ業界による社会貢献をアピールする狙いもあるのではと分析していました。
コロナ禍の今もまた、そうした狙いもあるようにも思っています。
テレワーク事業によってカラオケボックスは社会に必要な施設であるという認識が広まっていけば、
コロナ以後も十分にカラオケボックスは健在し続けると思います。