カラオケ喫茶等における感染予防対策の課題について。

カラオケ大会プロデューサーでもある唯野にとって、
この話題をリアルタイムで取り上げるのはさまざまな想いで躊躇がありましたので、
発生してしばらく時間が経った今、改めて紹介させていただきます。

石川県のカラオケ喫茶においてのクラスター発生の事例です。

◆カラオケでクラスター、感染51人に「他店にも広げた可能性」
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200814-OYT1T50054/

◆【石川】カラオケ大会 小松のスナック 歌や食事 マスク外す 隣同士の客 間隔30センチ
https://www.chunichi.co.jp/article/103010

カラオケ大会でクラスターが発生したという事例になります。
まずは、感染された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い回復を願っています。

さて、本件は「カラオケ大会クラスター」として各メディアに取り上げられました。

もっとも、上記などのWebサイト記事を拝読すると
会場にはカラオケ喫茶を使用し、出場者は店舗内で歌唱されたとのことですので、
いわゆるホールを利用した大きな会場でのカラオケ大会とは環境が異なることがわかります。


たとえばこうしたホールを会場とするカラオケ大会の場合は相応の広さがありますので、
座席間隔を空けるなどの工夫である程度の予防は可能です。

また、歌唱者のステージと観覧席との間にもある程度の距離がありますので、
(一般的に)ステージと客席が近いとされるカラオケ喫茶店舗に比べれば、
歌唱における飛沫感染のリスクは少ないと言えます。
(もちろんゼロリスクではありませんが)


※カラオケ喫茶で歌唱する唯野(当該店舗においてクラスターの発生はございません)。

逆にカラオケ喫茶の場合は、ホールに比べるとどうしても空間が限られ、
また、営業形態の性質上、観覧中に飲食や会話を楽しむ場合も多く、
それでかつ蜜環境になれば、歌唱以外の要素からの感染リスクも高くなりがちです。

そういう意味では、今回のクラスター発生はカラオケ大会というよりも、
これまで何度か報道されてきた、いわゆる「昼カラクラスター」と同様の、
限られた空間での密集を一因とした事例であると言えそうです。

ここからが本題です。

上記で紹介したリンク記事の中に、以下の一文がありました。

日本カラオケボックス協会連合会(東京都)などは五月末、
感染拡大予防ガイドラインを公表していたが、

男性は「(自分の店は)カラオケボックスではない」と考え、ガイドラインを知らなかった。
※男性…当該店の店主

上記で挙がっている「感染拡大予防ガイドライン」は以下になります。
https://www.karaoke.or.jp/img/guideline.pdf

全国のカラオケボックスの大半は業界団体「日本カラオケボックス協会連合会」に加盟しており、
かつカラオケボックスには大手チェーンも多いことから、
こうした有事の際には比較的トップダウンで指示を浸透させやすいものかと思います。

しかしながら、カラオケ喫茶・カラオケスナックの場合は個人経営であることが多く、
こうした業界団体からの指示がなかなか共有されにくい実情にあるかと思います。
(そもそもカラオケボックスではないので、「日本カラオケボックス協会連合会」の加盟対象外)。

したがって、何らかの感染予防対策を取ろうとしても、
どうしても店主もしくはオーナーによる個々の理解・判断によらざるを得ないのです。

実はこれこそが、カラオケ喫茶等での感染予防対策における大きな課題なのです。

すなわち、リスクを正しく知り、感染予防対策を正しく知り、そして正しく運用する。
そのための知識・方法を伝えるべき立場の人がいないということです。

カラオケボックスのケースのような、指導的役割を果たす業界団体がない以上、
個人経営のカラオケ喫茶・スナックにガイドラインを提示・浸透できる立場にあるのは、
店舗に直接(あるいはディーラー経由で)カラオケ機器を卸したり保守したりといった接点を持つ、
メーカーである第一興商さん、エクシングさん以外にないと思います。

全国カラオケ事業者協会によると、全国で現在稼働中のカラオケ機器の台数は、
カラオケ喫茶・スナック・居酒屋などの酒場市場で約14万6400台、
カラオケボックスで約12万9200台と、全体の半数以上が酒場市場での稼働とのことです。
https://www.karaoke.or.jp/05hakusyo/2020/p4.php

通常、カラオケ喫茶等は(ボックスと異なり)一店舗にカラオケ機械は一台と思われることから、
言い換えると、全国に約14万6400店舗存在するということになります。

ぜひとも両メーカーには、重要な顧客でもあるカラオケ喫茶・スナック向けに、
担当営業さん経由で、感染予防のガイドラインの提示(指導)を行っていただければと思います。

実際、カラオケ喫茶でのクラスター発生事例が報道されるたびに、
確実にカラオケに対する世間的なイメージが悪くなっていっているように感じます。。

これはカラオケ業界・カラオケ文化の危機を意味しています。

個人経営の店舗の場合、さまざまな経営者様がいらっしゃるので、
なかなか一筋縄ではいかない面もあるかと思いますが、
安心・安全にカラオケを楽しむためにもガイドラインの浸透を図っていただければと思います。

 

<追伸>

一般的に、カラオケ喫茶の客層は高齢者が多いと言われています。
カラオケ喫茶絡みのクラスター事例が報道される度に、
「分別のある高齢者がなぜ今カラオケを我慢できないのか」といった声がよく聞かれます。

しかしながら「カラオケこそが老後唯一の生き甲斐」とされる高齢者もまた多いのです。

もちろん、ウイルスを拡散させないように安全に楽しむのは当然の前提ですが、
カラオケを生き甲斐とされる高齢者に「当分カラオケは禁止!」とするのもまた酷なことです。

なぜなら「当分」がいつまでを指すのか、全く見えないからです。
高齢者によっては「当分禁止」を「一生カラオケ禁止」と受け止める方もいらっしゃるでしょう。
それはやはり、我慢できないことのはずです。

とは言え、感染して命を落としてしまっては元も子もありません。
だからこそ、カラオケ喫茶等で誰もが安全にカラオケを楽しめるよう、
メーカーの担当営業さん等に、店舗の方々に正しい予防知識を指導いただければと思っています。

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