初めにクイズです。
a. 日本全国のカラオケ付き酒場(スナック・カラオケ喫茶など)の総数
b. 日本全国のカラオケボックスにおける全カラオケルームの総和数
多いのはどちらでしょう?
ちなみにaはすなわち、全国の酒場に流通しているカラオケ機械総台数を意味し、
bはすなわち、全国のカラオケボックスに流通しているカラオケ機械総台数を意味します。
正解は「a」。
全国カラオケ事業者協会(以後JKA)が発行する「カラオケ白書2017」によると、
aは155,100店舗存在し、bは132,800ルーム存在するとのことです。
http://www.karaoke.or.jp/05hakusyo/2017_p4.php
つまり、カラオケ機械の流通台数を見る限りも、
カラオケ喫茶・カラオケスナックといった営業形態は、
今でもまだカラオケボックス以上の台数を誇っているということです。
とは言え、酒場市場(俗に言うナイト市場)の低迷が近頃話題になっています。
いわゆる「高級クラブ」はさておき、
大衆的なお値ごろ感のあるカラオケ喫茶・スナックは、
唯野の知る限りでも、年を経るごとに徐々にお店を閉めていっているように感じます。
このあたり、カラオケ業界も懸念を抱いているようでして、
前述のJKAも、毎年「スナックdeカラオケ」キャンペーンなどを主導しながら、
スナックへの来店を訴えかけています。
◆スナックdeカラオケ
http://www.snakara.net/
◆あったら行ってみたい! こんな『スナック』大募集
http://www.karaoke.or.jp/snack/oubo0529.php
では、なぜJKAがこれだけ力を入れてスナックを支援するのでしょうか?
それは冒頭に申し上げた通り、スナック等のナイト業界は、
カラオケ事業者にとってはカラオケボックス以上のお得意様だからです。
スナック・カラオケ喫茶の閉店はすなわち、カラオケ機材のリース終了を意味します。
カラオケボックスをも上回るカラオケ機械台数が出回っているわけですので、
店舗の減少はすなわちカラオケ業界の規模縮小にもつながりかねません。
ということもあり、ナイト市場の支援にあたっているものと思われます。
さて、ここからは唯野所感です。
便宜上、ナイト市場を「カラオケ喫茶」と「スナック」に二分します。
(カラオケ喫茶:カラオケを主目的とした喫茶・飲酒施設)
(スナック:カラオケを含め、スタッフとの会話や飲酒を目的とした施設)
◆カラオケ喫茶は、今後確実に大きく減少の一途をたどる
◆スナックは、店舗数は大きく減少しないかもしれないが、カラオケの利用は減少する
と考えています。
まずカラオケ喫茶については、客層が圧倒的にシニア層寄りとなっており、
かつ、主流のシニア層から若い世代の層への橋渡しが上手くできていません。
良くも悪くも「シニア層の憩いの場」であることが多いのが実情です。
したがって、寂しい話ではありますが、
年月を経るごとに、経営者もお客様も体力的に厳しくなってしまいます。
どんな業界もそうですが、世代交代が進まなければ必然的に先細ってしまうものです。。
これに対してスナックの場合は、
なんと言っても「女性と話せる・飲める」というメリットがありますので、
若い世代を含め、ある一定の割合の男性客からの需要は見込めると思います。
(若い世代は「スナック」より「キャバクラ」のほうがピンとくると思いますが、
ここではカラオケを設置している酒場施設という意味で、同一のものとして扱います)。
しかしながら、スナックにおけるカラオケの利用は今後減少すると思われます。
それはなぜか。
歌を歌いたいのであれば、何もスナックに行く必要はないからです。
歌を歌いたいのであれば、カラオケボックスに行くほうが効率的だからです。
スナックでは、ママさんやホステスさんとのトークなど、
スナックでしかできない、お酒の席そのものを楽しむことができます。
つまり、何も無理に歌を歌う必要はないのです。
その昔、約45年前にカラオケは夜の飲み屋で誕生しました。
当時、お酒の場の「余興」として、
世のお父さんたちのコミュニケーションツールとして、
広く支持されたのがカラオケでした。
つまり、カラオケとはお酒の席でしか楽しめないもの、だったのです。
しかしながら、約30年前にカラオケボックスが誕生し、
これによって、スナックなどのお酒の席でなくても、
老若男女誰もがカラオケを楽しむことができるようになりました。
そして今や一人カラオケ全盛の時代です。
何もスナックでお酒を飲みながらママさんにカラオケを聴いてもらわなくても、
歌いたい人は一人で好きな曲を好きなだけ歌い続けられるのです。
今は昔と違って、スナックでなければ歌は歌えないという時代ではないのです。
もちろん、スナックで歌いたいという需要は多少は残ると思います。
しかしながら、歌うことが主目的ならば、
カラオケボックスに行った方が安くたくさん歌えて効率的である以上、
このままではスナックでのカラオケという文化は縮小していくと考えざるを得ないのです。
そこで、JKAが打ち出している「スナックdeカラオケ」キャンペーンですが、
非常にプッシュしているのは伝わってくるのですが、
スナックの楽しみ方については、既存の紹介に終始しているのが惜しい所です。。
つまり、「新しいスナックの楽しみ方」「スナックでカラオケを楽しむ新機軸」
のようなアイデアが打ち出せていないのです。
(まあ、だからこそ「あったら行ってみたい! こんな『スナック』大募集」
という公募をJKAサイト内でも行っているのでしょうが…)
ここで、ナイト市場のカラオケの盛り上げに成功している例をひとつ紹介します。
千葉テレビの長寿番組「カラオケ大賞21」の仕組みです。
http://www.k-taisho.com/kekka.html
こちらは「協力店」と称するスナック(カラオケ喫茶)から、
それぞれお客さんを代表に選出して歌を競い合う番組になります。
この場合、テレビ出演の代表をお店から選ぶという大義名分があるので、
お店でカラオケを扱う意義はありますし、
テレビを目指すお客さんのカラオケ目的来店も期待できます。
他にも、スナックの普及については最近、タレントの玉袋筋太郎さんが
「一般社団法人全日本スナック連盟会長」として、
各地のスナックにスポットを当てて紹介しています。
https://www.joysound.com/web/s/joy/jinseisakaba
こうした試みからもあるいは、新しいスナックカラオケ・ムーブメントが起きるかもしれません。
いずれにせよ、少し手詰まり感のあるカラオケ・ナイト市場において、
ニーズを満たす画期的なアイデアが出てくることを今後期待したいと思います。
<追伸1>
こちらもJKAによるスナック支援キャンペーンのひとつ
「歌ってラッキーキャンペーン」
http://www.karaoke.or.jp/event2017/
スナック等でカラオケチケットを買うことを推奨するキャンペーンですが、
カラオケボックス全盛のこの時代、入室すれば歌い放題が普通のこの時代、
一曲歌うごとにお金を払う(=チケットを買う)という料金システムは、
慣れていない人にとっては馴染みにくい文化だと思います。。
まだ、歌い放題にしたうえで、
その分の料金をテーブルチャージ代として上乗せするほうがしっくりくる感もします。
いずれにせよ「カラオケチケット」という方式はそろそろ見直す時期にも思えます。。
<追伸2>
そう言えば20年前、唯野はスナックでバイトしていました。
当時の唯野のカラオケ定番ソングは、SHAZNAの「Melty Love」…。