カラオケ評論家活動

JASRACが2016年4月よりカラオケ教室から音楽使用料を徴収します。

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本日1月25日のJASRACのニュースリリースに
「歌謡教室における演奏等の許諾の開始について」という告知が掲載されました。
http://www.jasrac.or.jp/news/16/0125.html

簡単に言えば、これまで著作使用料を徴収していなかった、
カラオケ教室やボーカル教室といった歌唱指導の場においても、
2016年の4月より著作権に基づく使用料を徴収するといった内容です。

元来、著作権に基づく音楽使用料に関しては、個人的な使用を除き、
たとえば自営業の店舗などで自分で買ってきたCDを店内に流す場合であっても
「営利目的の使用」とみなされ、音楽使用料が発生することとなっています。
(なお、1999年の著作権法の改正までは、店内BGMとしての使用は問題なかったそうです)。

そういう意味で言えば、カラオケ教室を「営利目的の自店舗」と捉えれば、
そこに著作権に基づく音楽使用料が発生するというのは、わからなくもありません。

このように「法律」であると言われれば、仕方のないところはあります。
ただ、個人的には思うのです。

カラオケ教室で歌を習うために、市販のCDを買って教室に通う生徒さん。
「上手くなりたい」という思いに応えるべく歌を指導する教室の先生。
これらの関係性の中で、著作者に対する不利益はいったいどこにあるのでしょうか?

著作権法の精神は、著作者の権利を守り、著作者に不利益が発生しないことかと思います。
たとえば、市販CDの複製配布やデジタル音源の不特定多数に向けたネット上での公開は、
著作者が受けるべき正当な報酬を侵害するものであり、明らかに不利益が発生します。

カラオケ教室の例で言えば、過去に以下のような事例があったそうです。

「カラオケ教室にて無断複製物を頒布する目的で所持していた男性を告訴」

この男性は、有線放送やカラオケの歌謡曲を中心にCD-R等に無断で複製し、
自営のカラオケ喫茶の営業時間外に、毎週1回、自らが講師となってカラオケ教室を主宰し、
生徒の歌唱指導のために頒布する目的で所持していたものです。

この男性による無断複製物の製造・頒布による違法行為は、
過去10年にわたって行われており、
製造・頒布された無断複製物は少なくとも4,800枚にのぼり、
その中に収録された管理著作物は、延べ20,000曲に及ぶことが判明しています。
http://www.jasrac.or.jp/release/15/08_2.html

上記の事例を見れば、確かにこれはひどいと思います。
歌唱指導をするにあたって、CDをコピーして配布する必要はありませんし、
4800枚もの複製という数字からも、著作者の利益を侵害していると言えるレベルかと思います。
上記事例を抑制するというのであれば話はわかります。

しかしながら、自分で買ってきたCDに入っているカラオケ音源を持参して、
それを基に先生の前で歌い、指導を受けるといった形式で使用するという場合、
少なくとも、それが著作者に不利益を与える結果となるとは、ちょっと想像がつきません。

音楽には「聴く」だけではなく「歌う」という楽しみ方もあります。
自分で購入したCD付属のカラオケ音源を使って歌い、上達するために習うことは、
著作者が制作した音楽に関する親しみが増すことはあったとしても、
著作者に何らかの不利益を与えることはないと思います。

また、教室の先生からすれば、音楽に親しむ手助けを生業としているわけですので、
ここに使用料が発生し、請求が発生するというのは、少し行き過ぎ感を覚えます。
歌を教えることそのものが、その歌の著作者の権利を侵害するとは言えないかと思います。

大事なことなので何度も言いますが、著作者の権利は大事です。
とは言え、あまり著作権が著作物使用者をがんじがらめにしてしまうのであれば、
業界そのものが閉塞してしまうのではないかといった懸念も感じます。
著作者に不利益を与えないように権利を守る、このあたりの程よい塩梅が大事かなと思います。

あともう一点。
カラオケ指導者(教室)が使用料を支払うのが法(ルール)というのであれば、
納得するしないは別として、支払うべきとは思います。

ただ、それにしては、あまりにもJASRACの説明がわかりにくいと思います。
唯野もしばらくJASRACのサイトをにらめっこしていましたが、とにかくわかりにくいです。

たとえば、CDを使うのではなく、
カラオケボックス・カラオケ喫茶に出張してお店のカラオケで歌唱指導をする個人先生には、
音楽使用料は発生するのかどうか。

上記事案の見解は、JASRACのサイトからは見つけられませんでしたが、
全国カラオケ事業者協会のサイトに、JASRACの見解が掲載されていました。

無題

②既契約施設の取扱い
スナック、カラオケ喫茶、カラオケ歌唱室等で許諾契約済みの施設については、当分の間、契約更改を保留とする。

http://www.karaoke.or.jp/04news/news.php?no=82&pg=5

既にJASRACと契約している店舗については、今のところは保留との見解のようです。
大手カラオケボックスチェーン店であれば、ほぼJASRACと契約しているはずですので、
そういった指導で使うのであれば、申請は必要ないと受け止めることができます。

ただ、事例の数は上記のみならず、まさに先生の数だけ事例があると言ってよいと思います。
ただ、それぞれの事例に対する見解が、JASRACのサイトに少ないので、
個人の「歌の先生」にとっては判断が難しいのではと思います。
(そもそも今回の決定そのものが、大手ボーカルスクールならともかく
はたして個人の「歌の先生」に伝わるのかという懸念もありますが)。

また、JASRACへのお問い合わせもサイト上にフォームがあるわけではなく、

歌謡教室(カラオケ教室、ボーカルスクールなど)で著作物を利用する場合は、
全国にある担当支部までご連絡ください。
http://www.jasrac.or.jp/info/local_b.html

といった電話連絡形式です。
このネット時代、
せめてフォームを用意していただければ、お問い合わせもしやすいことかと思うのですが。。

また、個々の教室や歌の先生が個別に申請するのもかなり非効率です。
個人の方にとってはかなりの負担かと思いますので、何かしらの方法を考えるべきかなとも思います。
(あるいは、JASRAC自体が日本中の歌の先生・歌謡教室の所在を管理・DB化したいため?)

使用料を支払うなら支払うにせよ、使用者に負担の掛からない方式が提示できれば、
管理側もすんなりと徴収が進むのではないかと思います。
(決して良いとは思いませんが、たとえばCD定価にあらかじめ上乗せしておくとか)。
(CDがますます売れなくなるので決して良い方法ではないですが、あくまで手間を減らす一例です)。

支払いたくても、支払うための手間が多く、説明がわかりにくく、ハードルが高いこと。
これが現状の問題のひとつであるようにも思えます。

いずれにせよ、著作者、使用者それぞれがハッピーに音楽に関わることができる
程よい塩梅が大事かなと思います。

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