カラオケ音源の製作現場を取材してきました(その1)。

カラオケの製作現場を取材、ということで、
二大カラオケメーカーのひとつ、JOYSOUNDでおなじみのエクシングさんに伺いました。
(本記事の写真撮影等は、エクシングさんに許可をいただいております)。

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こちらが名古屋にあるエクシングさんの本社。
よく見るとビルに「brother」のロゴがありますが、エクシングさんは、
プリンターやミシンメーカーとして有名なブラザー工業さんの関連会社なのです。

ブラザー工業さんがなぜカラオケを、という話も面白いところなのですが、
そこは「通信カラオケ」の成り立ちに繋がるお話でして、
また別の機会にお話しさせていただこうと思います。

02
こちらは本社2階に飾られている黄金のキョクナビ。
記念品のように飾られていますが、もちろん使用可能とのことです。
(念の為に、キョクナビ:JOYSOUND、デンモク:DAM、です)

では、早速カラオケの作られている現場へ。

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こちらになります。
こちらの一室でカラオケ音源を製作しています。

カラオケユーザーの中には、以下のような誤解をされている方もいるかもしれません。

●カラオケ音源はレコード会社から楽譜を提供されて作られている
●カラオケ音源はレコード会社から提供された音源が使われている

実はそうではなく、カラオケ音源の製作は、
カラオケメーカーの技術者が、原盤をじっくりじっくり聞いて、
原盤の中で使用されている楽器音を一音一音拾い出して聞き分けて、
それを基に伴奏データ(デジタルの譜面のようなもの)を作成しているのです。
このデジタルの譜面をカラオケの機械で再生することで、
おなじみのあのカラオケの音源となるわけです。

では、なぜ楽譜をベースに制作しないのか?
そもそも楽譜自体が最初から存在しないというケースも多いですが、
仮に楽譜があったとしても、必ずしも原盤に忠実なものとは言えないからなのです。

たとえば演歌歌手などは、歌唱表現の手法として「タメ」や「コブシ」を使います。
しかし、これらを全て譜面に書き起こすと細かすぎる楽譜になってしまいます。
そこら中に64分休符が散在するような楽譜、読みづらいですよね?
そういう意味でも、可読性を考慮して、ある程度平準化して作成されるものなのです。

なので逆に言えば、平準化された譜割りの楽譜でカラオケ音源を作成すると、
原盤に比べて単調なメロディラインになってしまう場合もあるのです。
つまり、原盤から楽譜に変換した時点で、
「タメ」や「コブシ」といった情報が、ある程度落ちてしまっているということです。

なので、原盤をより忠実に再現しようとすれば、
譜面ではなく、原盤そのものをとことん聞く必要があるわけなのです。

05
お話を伺った、エクシングさんの編成制作部、鈴木尊さん。
最近お子様がお生まれになったとのことでした。

鈴木さんをはじめ、音源制作担当者は、
原曲を構成する数十種類の楽器の音色を聞き分けることができるとのこと。

聞き分けた楽器の音色を基に、電子データの中で最も音色が近いものを選び
パソコンを使ってデジタルの譜面に一から起こしていくそうです。
また、選んだ「最も近い音色」が、原盤の音色と微妙に異なる場合は、
その音色にエフェクトをかけるなどして、より原音に近づけていくという作業も行います。

一曲の作成は基本として一人で担当します。
一曲あたりの製作時間は、早くても2~3日。
構成の複雑な曲であれば、さらに日数がかかることもあるとのこと。

作成終了後は、制作チーム内で何工程もの「レビュー」を行い、
原盤と微妙に違う部分や聞き逃した楽器音がないかどうかをチェックし、
必要に応じて再修正するとのことです。

作成においては、とにかく、原盤に忠実に作ることを心がけているとのこと。
実際に唯野も、原盤音源と鈴木さんが作られたカラオケ音源を聴き比べましたが、
違いを聴き分けることはできませんでした。
まさに、職人技、です。

昨今のカラオケユーザーは非常に耳が肥えているので、
原盤との些細な「違い」には非常に敏感です。
そのため、変にオリジナルのアレンジを加えることなく、
とにかく忠実に「耳コピー」をして、原盤を再現するのが制作の役割とのことでした。

今回、お話を伺って驚いたことは、音源制作は下請けの業者に依頼するのではなく、
専門技術者を社員として採用し、自社で音源を制作しているというところ。
エクシングさんの音源に関する重い「責任」が伝わってきた感がしました。

06
次回は、カラオケ音源に付与する「ガイドボーカル」の収録現場を紹介します。

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